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そもそも、彼が敬遠される理由でもある緑の髪だって、まだ幼かったシエラが、赤い髪が目立つのを気にしたせいだ。趣味でもないのに真緑に染めて、これでクリスマスカラーだ、と笑う彼の笑顔は眩しかった。
もはやそんな風に他人の目を気にするような年でもなかったが、染め直しすぎて痛んだ髪を見れば喜びがこみ上げる。自分のためだけにしてくれているのだと思うと毎回その色に染め直す彼を止めることができなかった。
「シエラー、俺だってモテないこたぁねぇんだけど、まあ縁がないっていうか」
そうやって言い訳をして笑う彼に、いつもどこか胸がすっとするような思いがしていた。そして、そっとほくそ笑む。まだ、自分は一番だと。そんな自分が、嫌いだったが、やめることもできなかった。そして毎回、まるで自分が一番彼を知っていると言わんばかりに言うのだ。
「嘘だよ。だって、僕は誰より靖兄の格好良さとか、優しいところとか知ってるんだからね」
シエラは目を伏せて笑った。もし目を合わせたら、好きだという気持ちが伝わってしまう気がした。
「そんなことより! 早く片付け終わらせるよ! 早く寝て明日は新作メニューの研究したいから」
さぁさぁ、と靖真を追い立てて、気持ちを切り替えた。靖真はいつも、そんなシエラの気持ちなど欠片も気づかないようだった。そんな苦しくも美しい日々がいつまでも続くと思っていた。
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