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「珍しい。何か調べ物?」
「んー、なんかこの間のカーマイン? とかいう団体。うちの客、野良の子も多いからな」
シエラはああ、と頷いた。靖真は野良を野良と分かりながらも店に入れていた。常連客もそれを知りながら、見て見ぬふりをしてくれていた。全てを飼うことはできないからせめて、と一時でも管理課などから怯えずにいい場所を作ってやりたいとの談だ。場合によっては家を宿として貸すこともある。
中途半端だ、と怒るような部外者もいるだろうが、少なくとも彼の店にやってくる隷獣達からは好評だ。シエラも同じ隷獣として、そして彼に拾われたものとして、たった一晩の安らぎであっても大きな支えになることを知っていた。だから彼の行動を咎めたことはなかった。
「愛護団体って言うと、野良とかの保護と里親探しとか、虐待防止とかじゃないの?」
靖真の覗いているページを、彼の肩越しに覗く。そこは黒い背景の、なんだか重々しい雰囲気をした掲示板のようだった。
「んー、一応表向きはそうみたいだな。でも評判悪ぃな……動物達の自由と開放、権利を謳ってはいるが……」
「んー、抽象的すぎてわからないんだけど」
首を傾げるシエラに、靖真は苦い顔をした。
「要するに、人間とほとんど変わらないんだから売買や飼う、管理するって概念がおかしい。対等にしろってことだな」
それは、隷獣ならチラとは考えない話ではなかった。しかし、シエラをはじめ、大抵の隷獣はその仕組みに反抗しようとはしないし、それを当たり前だと受け入れている。人に飼われて初めて生きていけるということを幼い頃から染み込まされているからだ。
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