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「対等、ねぇ……」
実際、靖真に幸せな生活をさせて貰っているシエラには全く実感が沸かず、今までほぼ考える必要のないものだった。けれど、もし対等なら。対等な関係であれば、この想いを叶えることができる可能性だってあるのかもしれないという思考が頭をよぎる。
「シエラ、絶対コイツらに関わるなよ……」
重々しい声に、シエラはハッと顔をあげる。表情は見えなかったが、靖真はいつになく真剣な顔をしている気がした。声が沈んではいるが、少しだけ怒りを孕んでいた。
「保護……場合によっては騙した隷獣を使って、法外に資金を得たり、情報を漁ったりしているらしい」
「ふぅん……気をつけるよ」
シエラは、一瞬だけ自由になることを考えてしまった自分を恥じた。そもそも、主人を失った隷獣など、駆除や処分の対象で、運良く新しい主人を見つけられたところでまともな人間かどうかは分からない。自分の馬鹿な思考を哂った。
「うちに来る奴らにも伝えておくか……」
靖真は慣れない作業に疲れたと言わんばかりに、伸びをしてパソコンを閉じた。そして、シエラの頭をわしゃわしゃと撫でて笑った。その笑顔に、やはりシエラはこの笑顔を隣で見ていたいと再確認したのだった。
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