講義1:多点収束学

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 一晩明け。  私達は再び、昨日筆記試験を受けた部屋へとやってきた。  ヘラヘラした表情で中庭に入ってきたモメルから合格の通知を受け、  そしてそこで、本日またこの部屋にくるように伝えられた。  本当はそのときモメルにいろいろと学院について聞きたかった。  が、『詳細は明日』。  それだけ言い残し、モメルはさっささーと帰っていた。 「はじまるね」  ノムが柄にもなくそんな言葉を選んだ。  それがなんだかおかしくって笑った。  彼女もそれに答えてくれる。  さあ、扉を開けよう。  ガラガラと音をたてて扉を引く。  昨日の教室と異なる点にすぐに気がつく。  3人、先客がいた。  研究生。  そう。  だれも私達2人だけだとは言っていない。    学友だ。  仲良くなれるかはわからないですがね。 「おおうっ!」  そんなそこ抜けて明るい驚嘆の声を上げたのは、3人の中の1人。  女性。  私たちよりも少し年上くらいか。  物語に出てくる、まさに古風な魔女のような出で立ち。  黒のとんがり帽子。  黒のローブの隙間から鎖骨が覗く。  長い銀髪、後ろ髪を三つ編みに結って肩から前に垂らしている。  そしていやらしい、もとい、真昼の太陽のような笑顔。  教室のど真ん中に陣取っている。  とりあえず仮で、鎖骨ちら犬歯魔女先輩と呼ぶことにする。
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