講義1:多点収束学

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 レイナさんは、漏出魔力を隠さない。  だからこそ、わかったことがある。  彼女と私の魔術的な力量は、ほぼ互角。  どちらが先に回転合成を成功させてもおかしくないだろう。  ただ、彼女はそんなことは知ったことじゃない、といった感じ。  私の方は全く気にせず、チラ見すらせず、修行に集中している。  31回目の試行に入ろうとすると、教官、および鎖骨鯨の両名は帰っていった。  去り際に教官が、言葉をかけてくれる。 「コアを合成するには、コアの従属情報を強化する必要がある。  これを実現するためには、何度も試行を繰り返すしかない。  『できない』という言葉を脳内から排除しろ。  簡単には実現できないのは最初からわかっている。  嘘でもいいから『できる』と信じろ。  それが正解だ」  この人。  怠惰なのか熱血なのかよくわからん。  ただ『いい人』であることだけはよくわかった。  『ありがとうございます』。  その言葉は私からだけでなく、レイナからも生まれた。 *****
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