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だんだんと、点滴を投与する場所が腕から腹部、腹部から足へと変わるほど、母さんは僕を、兄さんと間違えるようになった。
兄さんじゃないよ、僕は弟の方だと言おうとしたけれど、僕はあえて「ただいま、母さん」と兄さんのふりをしたんだ。
落胆させては、風前の灯火みたいな命が消えてしまいそうだからね。
よかった、よかった、ようやく帰ってきてくれたと母さんは僕をやせて乾いた手でなでて、泣きながら喜んでいたよ。
ありがとうね、帰ってきてくれてと何度も礼を言っていた。
兄さんは、母さんの自慢だったからね。成績もよくて、スポーツもできて、仕事も信頼されて、どことなく要領が悪い僕よりもはるかに優れていたじゃないか。まるで、少女漫画の男の子みたいだって。
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