にたもの兄弟

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 比べられても、僕は兄さんに追いつけないよ。  母さんだって、求めても仕方ない、かなわないとわかっていた。  ふたりきりで暮らすようになって、僕は母さんにずいぶんと気を遣ったよ。  兄さんと一緒に出て行った、女の人を憎む言葉も八つ当たりも、全部受け止めた。  ひとしきり泣き叫んで騒いだあと、母さんは「ごめんなさい」と謝って、僕によりかかる。  だんだんと病におかされて、軽くなっていく母さんに、僕はただよりそって、子どもをあやすようにしてやることしかできなかった。  家にこもって仕事もなく、ただ兄さんから送られてくる金でやりくりして、母さんの世話をしていたんだ。出会いなんかないさ。母さんは、僕にも少なからず望みを託していた、ように見えたけどね。
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