にたもの兄弟

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 見た瞬間、これだと思ったよ。  幸い、僕と母さんの二人暮らしならあまり金はかからない。医療費とかはある程度の金額にはなったけれど、食べることに困るほどじゃなかった。  手術をするわけでもなく、ただ消えてゆく命を、痛みがないように過ごさせているだけだ。兄さん、僕がなにを企てたか、聡明な頭脳を持っていることだから、すぐにわかっただろう。  僕は店にかけあって、言い値でマネキンごと服を買い上げた。  薄桃色のワンピースは脱がせて、コートとあわせた白い靴と、店の人がサービスにと持たせてくれたネックレスにコートとおなじファーで出来た帽子をかぶせてくれた。  話を聞いて、泣いていたよ。  最初は変な奴だとも言いたげな視線を投げかけられたけれど、母さんがどういう状態で、なにを望んでいるか伝えたら承諾してくれたんだ。  一万円札を、何十枚も財布からちらつかせたのも、効果があったかな。
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