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あれだけ大変だった狙撃の張り込みも、上からの一言で霧散してしまう。空しさはある。だけどそれだけだ。
数時間後に言った通りの空爆が行われた。ベトナム戦争の時みたいな絨毯爆撃ではなく、標的の家を吹き飛ばせる量の爆弾が空からピンポイントで落とされる。
GPSに導きによって爆弾はピタリと命中した。オレンジ色の火柱が立って、数秒後に轟くような音が僕を震わせた。
終わってしまった。地球の裏側まで飛ばされた僕と観測手の苦労はこの瞬間に徒労となった。
「お前が撃ってりゃ、妻も子どもも死ななかっただろうな」
「だろうね。だけど僕が殺したわけじゃない。本国でボタンを押した奴が殺したんだ。それに――」
観測手は珍しくなにも言い返してこなかったし、言葉を遮ったりもしなかった。
「みんな一緒に死ねて良かっただろ」
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