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あのときの光秀の顔。黒くくすんで亡霊のようだった。エリートをこてんぱんにすると気持ちがいいというが、正直あれは後味悪いだけだった。あの人も言い分があるだろうに、ううーっ、とか呻くだけでろくに反論しないからだ。
しかしまあ、苦労したがそれでもようやく光秀を追い出せた。
(さすがは僕。えらいぞ自分を褒めてやりたい)
と、ことが成ったとき蘭丸は自分で自分を慰めた。
だが、災難はこれでは終わらなかったのだ。
「ようし!じゃあ、徳川殿が来る前に石窯の試運転だでや!蘭丸、光秀を呼べ!まずは接待役のあやつに馳走してやるだわっ」
「えっ、ええっ!?殿、光秀様は今、中国出兵の準備中ですよ!そんな無茶な」
「なーにそんなの行く前に、ちょっと寄らせればええでや。あっ、おいお蘭よ。光秀めは、誕生日はいつだでや」
「えっと享禄元年(一五二八年)とはうかがいましたが、誕生日まではちょっと…」
「じゃあ、今日でいいでや!主君の我が決めたわ!おーいっ、皆の者、今日は光秀の誕生日を祝おうでや」
「ええっちょっとそんな」
とんでもないことになった。
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