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出会い
ちゃりん!
音をさせ、私は、特定のバーのカウンター席に座る。
「やあ、久し振りだね、美希ちゃん」
「お久しぶりです、マスター」
まだ、彼と付き合う前に、一人寂しいクリスマスを送っていた時、いや、今と変わらないが、このバーに通うほど友達ともよく飲みに来ているところだ。
「マスター、同じの」
「はい」
マスターは素早く手を動かす。
そして、私の目の前に、グラスを置き、ワイン注ぐ。
ゆっくりと流れる川のように、グラスへと入れ替える光景を目にしながら、胸が少しわくわくとなる。
揺れる中身。
「どうぞ」
マスターは、私に両手で持って、渡す。
私は、それを受け取り、ゆっくりと口に運んだ。
「はーぁ…」
最高だ。
一人なのに、一人ではないような感覚をさせるバー。
「はーぁ」
口に運び、ワインを味わっていると、ちゃりん、という音が耳に入る。
「やあ!」
「やあ!マスター」
マスターとの話のやり取りが耳に染みる。
「今日は、一人?」
「…まあ…」
「そっか」
そこに、「マスター、すいません!」と呼ぶ声。
マスターが、その場から去ってしまうと、「隣、座ってもいいですか?」と彼は言う。
「…はい…」
本当だったら、今日私のこの右隣に座るのは、彼だったのに。
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