待ち合わせ

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待ち合わせ

キラキラと白い光たちが夜空の星よりもはるかに輝いた街の中。 辺りを見渡せば、手と手を繋ぎ、幸せが溢れたような光景が広がっている。 「ラララ、ラララ、ラララーラーラ…」 なんて言ったって、今日は、12月24日。クリスマスイブだ。 ちょうど、空もいい感じに白い粒のようなものが降り出してきた。 完璧なところに、街にいる人たちは、上手く染まっている。 私もその一人な筈だった。 「…まだかな…」 スマホの画面をピカッと光らせ、時間を見る。 もう、約束の時間だというのに、まだ、来る気配がしない。 「…どうしたんだろう…」 だんだんと、寒くなっていく身体に、はあはあと息を手で覆いながら、温める。 約束の時間から、すでに、30分が経過する。 「…うーん…」 来ない。来ない。来ない。 そこに、走ってくる男の人。 「…ごめん!待たせた!」 彼だと思った。 しかし… 目と目が合った瞬間、「え?」となる。 それもそうだ。誰だって、知らない人に肩を触れられ、しかも、全然違う人。 顔も違うし、声も全然低くて… 「あっ!すいませんでした!」 相手側は深く頭を下げる。 私も私だ。 「いや…こちらこそ、ごめんなさい…」 頭を上げる。 「本当にすいませんでした!」 そう言い、その場から去って行った。 「…」 さらに、待ち続けて、20分。 ふと、先ほどの行ってしまった彼は相手の人に会えたのだろうか。 彼女なのかな? そんなどうでも良いことを考えていると、チロっと音が鳴る。 鳴った衝動で、手から伝わった振動。 私は、慌てて、スマホを開く。 すると… "ごめん!今日は、仕事が終わりそうになくて!" 「…」 「はーぁ…」と私は溜息を零す。 "そっか!了解!" 私は、そう返した。 久し振りに会えると思ったのに… 「はーぁ…」と再び、溜息を吐く。 「…」 もう…私たち、このまま、会わないで… まだ、何も言われてないし、まだ、きっと… 本当に仕事かもしれないし! 私は、行きつけのバーに足を運んだ。
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