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「…うん?」
気付くと…
ワシは…
横たわっていた…。
「え?」
反射的に、起き上がって辺りを見回す。
薄暗く…
ただ壁に囲まれた、洞窟の様な狭い場所…。
「やぁ、お目覚めですね!」
不意に声をかけられ、そちらを見ると…
一人の男がワシの目の前に立っていた。
「お、お主は!何者じゃ!」
その者は…
何とも、不可思議な格好をしていた。
見た事の無い、ぴったりとした白い衣服を身にまとっている。
頭は、全く毛髪が無い。
その衣服…
異国の物であろうか…。
だとすると、コヤツ、
種子島に流れ着いた宣教師の末裔か?
そして…
その男の目鼻立ちは、恐ろしく整っていて…。
まるで…
かつて、ワシと同じくお館様にお仕えした、小姓の森蘭丸殿と見紛うばかりの美形である。
「その不可思議な格好…。
ははん。読めたぞ!さては…お主!果心居士じゃな?!」
かつて噂を耳にした、妖術師の名前を言ってみた。
しかし…
「いえ。私はその様な者ではありません。
私の名前は…『みと』とでもお呼び下さい」
と、その男は全くの無表情で答えた。
「何?水戸じゃと?
さすれば、家康の血筋の者か」
と!突如!
ワシの頭の中に、ある光景が浮かんで来た!
大病を患い、床にふせっているワシ…。
それを心配そうに見守る…
淀、秀頼、三成たちの…
顔、顔、顔…。
「こ、こうしては、おられん!
おい!水戸とやら!ワシは、こんな所でのんびり構えては、おられんのじゃ!
淀や秀頼に元気になったワシの姿を見せなくては!早くここから出せっ!
この太閤・秀吉の命令じゃ!」
すると…
「いえ…
残念ながら、淀殿も秀頼殿も、もう生きてはおりません。
更に言いますなら、あなたも既に死んだと言っても良いでしょう。
そして、私はあなたをここから出す事はできないのです。
ついでに言うなら、私は家康殿の血筋ではありません」
水戸とやらが、矢継ぎ早にそう言い放ったではないか!
「な、何じゃと?!
淀も秀頼も死んだじゃと?!それは、まことかっ!」
「はい。残念ながら」
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