【その後の天下人のそのまたその後】

2/15
前へ
/15ページ
次へ
{1} 「…うん?」 気付くと… ワシは… 横たわっていた…。 「え?」 反射的に、起き上がって辺りを見回す。 薄暗く… ただ壁に囲まれた、洞窟の様な狭い場所…。 「やぁ、お目覚めですね!」 不意に声をかけられ、そちらを見ると… 一人の男がワシの目の前に立っていた。 「お、お主は!何者じゃ!」 その者は… 何とも、不可思議な格好をしていた。 見た事の無い、ぴったりとした白い衣服を身にまとっている。 頭は、全く毛髪が無い。 その衣服… 異国の物であろうか…。 だとすると、コヤツ、 種子島に流れ着いた宣教師の末裔か? そして… その男の目鼻立ちは、恐ろしく整っていて…。 まるで… かつて、ワシと同じくお館様にお仕えした、小姓の森蘭丸殿と見紛うばかりの美形である。 「その不可思議な格好…。 ははん。読めたぞ!さては…お主!果心居士じゃな?!」 かつて噂を耳にした、妖術師の名前を言ってみた。 しかし… 「いえ。私はその様な者ではありません。 私の名前は…『みと』とでもお呼び下さい」 と、その男は全くの無表情で答えた。 「何?水戸じゃと? さすれば、家康の血筋の者か」 と!突如! ワシの頭の中に、ある光景が浮かんで来た! 大病を患い、床にふせっているワシ…。 それを心配そうに見守る… 淀、秀頼、三成たちの… 顔、顔、顔…。 「こ、こうしては、おられん! おい!水戸とやら!ワシは、こんな所でのんびり構えては、おられんのじゃ! 淀や秀頼に元気になったワシの姿を見せなくては!早くここから出せっ! この太閤・秀吉の命令じゃ!」 すると… 「いえ… 残念ながら、淀殿も秀頼殿も、もう生きてはおりません。 更に言いますなら、あなたも既に死んだと言っても良いでしょう。 そして、私はあなたをここから出す事はできないのです。 ついでに言うなら、私は家康殿の血筋ではありません」 水戸とやらが、矢継ぎ早にそう言い放ったではないか! 「な、何じゃと?! 淀も秀頼も死んだじゃと?!それは、まことかっ!」 「はい。残念ながら」
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加