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恐らく…
二人を亡き者にしたのは…
あの家康に違いないっ!
「おのれ!家康め!
おい!水戸とやら!
重ねて申す!ワシをここから出せ!さもなくば、この場でその首をはねてくれるぞ!」
と!ワシは、腰の太刀を掴もうとした!
と!
「え?な、何とっ?!」
ワシは、思わず唖然としてしまった!
いつの間にか…
ワシは、太刀はおろか…
身ぐるみ剥がされていた…。
つまりは、素っ裸だったのである!
「貴様!ワシの衣服と太刀をどこへやった!
この太閤の身ぐるみを剥がすとは、まっことイイ度胸をしておるの!」
「いえ、ですから…
あなたは、もう既に死んだのです。そして、私はあなたをここから出す事ができないのです。どうか、受け入れて下さい」
「お主、気は確かかっ?!
ワシが死んだじゃと?たわけた事を申すな!
ワシは、これこの通り!ぴんぴんしているではないか!
一刻も早くこんな所から出て、家康のヤツにイッシ報わなければ本当に死んでも死にきれんわ!」
「あなたは、もう死んでるんですって。
家康殿も、もうとっくのとうに死んでます」
「な、何じゃと?!家康が死んだじゃと?
謀反にでもあったか?」
「家康殿は、鯛の南蛮漬けの食あたりで亡くなりました」
「何じゃと?」
「大層、お好きだったようですよ」
「ぶはっ!そりゃ良いな!
このワシは、天下人として大往生を遂げた!
しかして、あの家康は食あたりで死んだと言うのか!ハハハ!」
ワシは、思わず大笑いをしてしまった!
と、それを聞いた目の前の水戸という男…
「おや?
今…あなたは『自分は、天下人として大往生を遂げた』と、ご自身の死を受け入れましたね」
薄笑いを浮かべたではないか!
「あ」
ワシは、水戸を睨み付けた。
実は…
このワシ自身も心のどこかで、
『自分は、もう死んだのかもしれない』
と、考えていたのだ…。
よく考えたら、あれ程の大病を患ったワシが、急にぴんぴんと元気になるはずがない…。
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