第三夜

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「あー……よかった。酔った勢いって言われなくて」 「え?」  酔った勢いって何の事? と井上が怪訝そうな声を上げる。 「2回目」 「何が?」 「告ったの。先週の井上が忘れたから」 「え、ちょっと待って。なにそ…」  言葉を遮って少し強引に唇を重ねると、井上は拒むこと無く、応えてくる。1週間ぶりに触れた井上の唇は思っていた以上に心地よくて、角度を変えてもう一度重ねる。 「だって、覚えてないだろ?」 「え? えっと……それは……」 「なんで忘れんの?」 「なんでって…」 「俺ちゃんと好きって言ったじゃん」 「だって……」 「井上だって言ったくせに」 「ねぇ、それ……」 「自分だけ忘れてずるいだろ」 「そういうつもりじゃ……」 「つーか、前置き長すぎてフラれたかと思った」 「え……?」  キスの合間に言いたいことだけ言って、井上には答えを言わせずに唇を何度も重ね合わせる。困惑している様だけど、抗うつもりは無いらしく、腕の中の井上は俺の胸にその身体を預けてきていた。
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