第三夜

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 このまま押し倒したいけれど、流石に床は……と思って抱き抱えていた井上をベッドに降ろして、改めてキスを重ねる。  細い髪を手で梳いて、指先で耳元を撫でると擽ったかったのか、井上は小さく声を上げて首を竦めた。  今日だけじゃない。今週ずっと、散々噛み付きたいと思っていた井上の白い首筋にようやく顔を埋めて、柔らかな耳朶を甘噛みして、その首筋を啄んだ。  触れる度に井上の唇から零れる切なげな吐息と押し殺した甘い声が、誘うように耳元をくすぐってくる。 「ねえ、前橋君。お願い、待って……」  瞳を潤ませた井上の甘い吐息が混じった声に迷いなく返す。 「やだ。待たない」  正しくは、もう待てない。
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