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変化を示して来た白い壁も、今は落ち着いている。なにも知らせて来ようとはしない。いや、それが、役目だったのか?
なぜ、そう思ったのかはわからないが、どこかがそう感じ取った。しかし、それは確実に正しいことなのだろう。現に、苦しさが消え失せていた。
心が安らぐ。そうか。この白い空間は、守るための。
そして、光が差した。
* * *
視界に入ったのは、真っ白な光景。感情の無さそうな白だ。そう思ったのだが、ところどころ染みのようなものが見えたり、黄色がかっているようにも思えた。
左側を見ると、全て受け止めてくれそうな白。手で触れてみたいが、届かない。伸ばせない。下の方にできた隙間から、光が漏れていた。それだけがわかる。
次に、視線を前に移す。自分には、柔らかそうな白が掛かっていた。これに包まれているみたいだ。そして、身体は動かない。
「お目覚めになりましたか」
声がした。右を向くと、清潔そうな白が目に入る。その上には、不健康そうな白い顔が乗っている。もっと眠ったらいいのに。
「かなり長い間、眠っていたんですよ。ひとまず、目を覚ましてくれて良かったです。今、奥様をお呼びしますね」
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