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ひっくり返って、なだらかな傾斜の白がこちらに向く。そして不健康そうな白は真っ黒に。遠ざかろうとするそれを、止めようと思って声を出す。
「自分は……」
声は届いたらしく、黒かった部分が半分くらい白くなった。彼は赤みがかった部分を動かす。
「どうかしましたか?」
「自分は、誰なんですか?」
彼の顔が蒼白になった。その光景に、なにか感じるものがあったが、途端に怖くなったため考えることをやめた。
「……あなたは──」
話を聞いているうちに、だんだん気持ち悪くなって来て、怖くなって来て、意識は暗黒に埋め尽くされていった。
そして見たのは、白に視界が埋め尽くされる光景。身体が冷たくて白いものに覆われていく感触。
ああ、そうか。俺は。
なにがあったのか、全てがわかった。そして、目覚めれば、再びわからなくなるだろうことも。
記憶も、感情も、感覚も。
そうして、なにもかもが、ホワイトアウトした。
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