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ホワイトアウト
目を開くと、辺り一面が真っ白だった。壁も、床も、全てが白い。部屋、なのだろうか。見回してみるが、平坦な白があるだけで、自分の姿もよくわからない。首から下がないみたいだ。
一体ここはどこで──自分は誰なんだ?
何をしているのか、何故ここにいるのか、それを知りたかったはずなのに、そもそも自分のことがわからなかった。
わからない、というのが知らないということなのか、それとも忘れてしまったということなのか。思い出してみようとする。だが、途端に苦しくなった。
体がないはずなのに、ないはずの場所が締め付けられているように苦しい。心が苦しい。体が震える。
整理もついていないのに、また、変化が起こる。壁の一部が、蠢き始めた。こちら側に迫り出してくるように見える。そして、その迫り出した部分が、下の方から上の方へ、細くなっていく。
嫌だ。見たくない。なぜか、そう感じた。そして、震えと苦しさが、より酷くなる。
同時に、なにか、光景が浮かぶ。それは、一面が真っ白で、でもこの部屋の無機質な白とは違う、どこか美しさと厳しさを感じる白。そうだ、これは──なにかがわかりそうなのに、掴めそうなのに、なにもわからない。
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