916人が本棚に入れています
本棚に追加
本当に今にして思えば、
これは当然の結果だろう。
突如として路地裏から出てきた何かが店の前に来て、
落ちた食べ物をムシャムシャと汚く食べているのだ。
驚いたお客は一気に遠のき、
気持ち悪がって近づかない。
怒ったゴブリンの屋台主が、
そんなモノを蹴飛ばすのは当たり前だ。
そんな彼が怒鳴りながら、
汚い黒布を被った何かに近づいていく。
何を蹴ったのかを確認する為に。
近づいたゴブリンの屋台主は、
汚い布切れを足蹴して剥がし、
アタシの顔を見た。
――……そして絶句した。
周りのお客や見物人も、
私の顔を見て気付き、
声を、悲鳴をあげている。
意識を失いつつある中で、
ぼんやりとアタシは思う。
あぁ、そんなにアタシは醜いのか、と。
そして視線を泳がせ変えた先に、
先ほどまでアタシが居た路地裏の道が見えた。
あぁ。アタシはあそこから、
出てきちゃいけなかったんだ。
たとえあそこで死んでも、
その方が良かったんだ。
そう思った。
その時に多分、
『私』と『アタシ』の意識と記憶が初めて交差した。
『私』の前世の記憶が『アタシ』を侵食し、
今の自分と前世の自分が重なり合う。
そうだ。
私はずっと誰かに迷惑をかけて生きていた。
大好きだった家族に迷惑をかけて、
最初のコメントを投稿しよう!