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その内の二つ目が、ミハエルの人格として器の中で共存し、
今までジークヴェルトの肉体的感覚を共有していたのだ。
しかもミハエルの記憶や魂に、
ジークヴェルト本来の記憶や魂が影響されず、
その自我を数年以上も保ち続けているらしい。
凡才などと揶揄され続けたジークヴェルトが、
魂に接触する事で記憶と感情を読み取り、
その魂に人格を形成させ魂の拠り所を与えるなど、
明らかに常軌を逸した存在なのは間違いない。
『魂』とは、極めて脆弱な集合体だ。
肉体という器を得なければ、
個人の特性となる人格さえ形成する事が難しく、
また記憶媒体を入力し出力する装置にもなり得ない。
精々が、記憶や経験の保有が限度だろう。
その魂が一つの肉体に二つも共有されるという事は、
普通なら互いの人格と記憶が衝突し、
器の内部で自我の崩壊を招き、
記憶の混濁や人格の乖離を引き起こしかねないにも関わらず、
この少年は自分の人格と他者の人格を共存させ、
それを維持し続けているということだ。
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