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第001話
『私』の自己紹介は概ね終わったので、
次は『アタシ』の事を話そう。
『私』が『アタシ』を認識する以前の頃の話だ。
自我が目覚めた時、既にアタシは1人だった。
前世の頃がマシに思えるほどの状況だったと思う。
身体はとても汚く、
ところどころ皮膚が裂けたり、
体よりやや大きめの虫食いだらけの黒布を被って、
右足首に鉄の輪と短い鎖が、
地面に着かないくらいの長さで着けられて、
狭い路地裏のような場所で、
誰からも意識されないように生きていた。
生きていたというのも不思議なくらいだった。
町の人々が捨てた砂利まみれの食料が捨てられる、
ゴミ捨て場となっている場所を漁り、
食べられそうなモノはなんでも食べて、
水が無いので裏路地に秘かに溜まる、
汚泥を飲んで生きていた。
綺麗な水を探そうと思った事もあったけれど、
それらしいモノがある場所へ行くには、
路地裏から出て沢山の人影が見える大通りに出るしか無く、
アタシは外の異様な雰囲気を感じて、
一度も出ようとは思えなかった。
井戸の水など飲もうとするものなら、
何をされるか分からず怖くて近づけなかった。
誰の邪魔にもならないようにしていれば、
足蹴にされたり殴られたりもしなかった。
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