余韻

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余韻

窓から差し込む穏やかな朝の光で目が覚めたが、また目を開けずに昨夜の甘い夢のことを思い出していた。よみがえる愛の余韻。この夢を永遠に忘れたくないと、そう願って、アンのぬくもりを何度も繰り返し反芻し、瞼を開いた。 カーテンがそよ風に揺れ、日差しが水の波紋のように室内に流れこみ、鳥のさえずりも聞こえた。 爽やかな朝だ。自分はまだ生きている。今日から違う人生を始めようか。いつ死んでも後悔しない一日を過ごして、そんな朝を重ねていこうか。最期の日が来るまで。 身を起こすと、ベッドの片脇のシーツが開かれていた。私はそのシーツの上に彼女のぬくもりを探したが失望に終わった。昨夜の出来事は、夢だったのか。 どちらでもよいのかもしれない。そう、私は彼女との思い出に生きることに決めたのだった。アンとの幻想に生きてみることに。 起き上がり目を移すと、反対側のサイドテーブルに雑誌が開かれていて、そのページのヘッドラインが目に飛び込んできた。 「まだ遅くない。ずっとあなたを待っている」と。 アンとの記憶が鮮やかに蘇る。私は、室内のアンの残り香を探し、それを胸いっぱいに吸い込みながらベッドから立ち上がった。 そう、今までのように彼女を待とう。またいつか会えるに違いない。 END
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