再開

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再開

しかし、彼女は、私の求婚を受け入れなかった。しかも理由を言わずに、私の前から姿を消した。そうだ、彼女には私の人生に寄り添うのは無理だったのだ。そして私にも自分のしがらみを捨てる勇気がなかった。 失意と悔恨の末、彼女を忘れる決意をしてひたすら仕事に没頭したが、心の底では、彼女との再会を待つ気持ちを押さえられなかった。ずっと待ち続け40年の時は流れていた。 葬儀の客が帰った後、屋敷に一人残された。部屋中にあふれる白いバラ。エマ、ありがとう、こんな夫の良き妻でいてくれて。君の忍耐と、その愛に深さに今頃、気が付いた私を許してくれ。 彼女にやっと言えた。この言葉を。 少し、心の重石が軽くなって、寝室にもどりベッドに腰を掛けた。 病魔に侵された臓器の鈍い痛みを感じながら、私はふとアン、昔の女のことを不謹慎にも思い出していた。どうしているのだろう。記憶から抹殺した思い出を手繰り寄せた。 私は引き出しの中を探り、彼女に渡そうとしたルビーの指輪を手に取って、いつものように親指で撫でた。アンの思い出をすべて消すのが惜しくて、私たちの恋の証を一つだけ残していた。 時折、そのルビーに口づけをして、遠い記憶を呼び覚まし、甘い思い出に浸っていた。彼女はこの指輪を手に取り、口づけをして私に返したのだ。 指輪をまさぐりながら、この2日間、ほとんど何も食べていないことに気が付いて、それを胸ポケットに大切にしまい車を出した。 久しぶりに街に出て、行きつけの店で食事でもして、しばしくつろぐのもいいだろう。 街で5本の指に入る高級レストランは満席だったが、常連なので何とかテーブルを取ってもらった。そしてダイニングルームに入っていこうとすると、背後で耳慣れた声がしたような気がした。 振り返ると、そこに彼女の、若いときのアンの後姿があった。思わず声をかけそうになり、言葉をのんだ。今風のショートヘアーのその女は振り返って私を見た。 彼女だった。 しかし信じられないことに、若いときのままだ。かつては彼女は髪は長かったのだが。 私は夢を見ているのだろうか。彼女を見つめることを止められない。 その女は、私を見て爽やかに微笑んだ。
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