【6】

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 ラウンジを出てからの彼は、何か機嫌良さそうで 「……へっ?」 地下駐車場に下りるエレベーターを待っていたら、いきなり手を握られた。  大きな手で包み込まれる温もりに、頬が熱くなってくる。 「あの」 「いーだろ。別に」  そりゃ、他に待ってる人は居ないけど……。 「誰か知り合いとか、お客さんとか会ったら」 「俺は構わねえけど?……お前は嫌か。こんなオッサンと手繋いでンの見られたら」 「っ……あたしだって別に。……その……だって、来年には」  目の前の扉が開いた。  手を繋いだまま乗り込んで、彼がボタンを押してから言う。 「来年には?」 「え?……だから……結婚したら旦那さんになるんだし、別に旦那さんと手繋いでたって」  言ってから、いや、でも違うかも、と思った。  うちの両親が手繋いだところなんて見たことないし、会社なんかでも、結婚するとご主人と会話すら無くなる、なんて話も聞くし……。  やっぱりおかしなことなのかな……と考えてたら、頬に手が触れて、彼の方を向かされた。  わたしの顔を覗き込んだと思うと、彼は目を瞑って唇を重ねた。
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