【10】

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「黙り込んで、どうした。今の話気にしたか?」 「え?あ……そうじゃないです。ちょっと仕事のこと思い出しちゃって。やり残したことないか、気になって」  咄嗟にそう言ってごまかすと、彼は笑って言った。 「真面目なのはいいけど、職場出てから考えたってどうにもならねえぞ」 「……うん」 「やるだけやってきたんだから、飯食ってゆっくり休め」    帰ったら、前に食べて美味しかったコンビニのパスタとサラダがテーブルに置いてあった。 「これ……」 「確かそれ気に入ってたなと思って。合ってたか?」 「あ、はい」 「なら、良かった。じゃあ俺先に食ったから、風呂入ってるな」 「……ありがとう」  レンジで温めて一人で食べ始めると、なんだか嘘みたいだと思う。  わたしが好きなものや気に入ったものを、実の親より覚えてて、あんなに大事にしてくれて。  内容は教えてくれなかったけど、お家で何かあったかもしれないのに、そんな時まで気を遣ってくれて。  煙草もやめてくれて、結婚の約束もしてくれて、……わたしなんかがそんなに大事にしてもらっていいのか、自分には不釣り合いに思えるくらいで逆に不安になってしまう。
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