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「黙り込んで、どうした。今の話気にしたか?」
「え?あ……そうじゃないです。ちょっと仕事のこと思い出しちゃって。やり残したことないか、気になって」
咄嗟にそう言ってごまかすと、彼は笑って言った。
「真面目なのはいいけど、職場出てから考えたってどうにもならねえぞ」
「……うん」
「やるだけやってきたんだから、飯食ってゆっくり休め」
帰ったら、前に食べて美味しかったコンビニのパスタとサラダがテーブルに置いてあった。
「これ……」
「確かそれ気に入ってたなと思って。合ってたか?」
「あ、はい」
「なら、良かった。じゃあ俺先に食ったから、風呂入ってるな」
「……ありがとう」
レンジで温めて一人で食べ始めると、なんだか嘘みたいだと思う。
わたしが好きなものや気に入ったものを、実の親より覚えてて、あんなに大事にしてくれて。
内容は教えてくれなかったけど、お家で何かあったかもしれないのに、そんな時まで気を遣ってくれて。
煙草もやめてくれて、結婚の約束もしてくれて、……わたしなんかがそんなに大事にしてもらっていいのか、自分には不釣り合いに思えるくらいで逆に不安になってしまう。
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