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【11】
「……マジな話、お前に何かあったら、俺はまともでいられねえと思う。だから、俺の知らないところで他の男と二人ってのが気にならないわけじゃねえけど、一人で危ない目に遭うよりはよっぽどいい」
「……そう言うかなと思ったので、意地張らない方がいいのかと思ったんです」
「それでいい。聞いてる限り、信用できる奴みてえだし。……ってのも、複雑っちゃ複雑だけど……」
「いい人だとは思いますけど、あたしは竜のことしか考えてませんよ。だから、利用してるみたいで嫌だって言ったんですから」
ぷっ、と彼は吹き出して笑った。
「そしたら奴どうしたよ」
「……『タチのいいストーカー』だから、あたしの気持ちは関係ないからいいんだ、って言ってました。自分がそうしたいからしてるだけだ、って」
「ふーん……」
その顔は、どちらかと言えば笑っているように見えた。
わたしなら、他の女の人が、この人にそんなことを言ったと聞いたら、すっごい嫌な気持ちになるけど。
「……ヤキモチ焼いたりしないんですか?」
「そう見えねえか?」
「あたしが逆の立場だったら、もっとあからさまに怒ってると思うし、もう二度とその人に顔も合わせないで欲しいって思います。多分」
彼は笑って言った。
「それ、もう食わねえのか?」
「え?」
「飯だよ」
「あ。いえ、食べます。……話に集中しちゃって」
「だったら、早く食え。俺、これじゃ眠れねえからな」
がたりと椅子を立って、彼はわたしの頭に手を置く。
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