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「……ん?」
「顔に出さなくたって、いろいろ辛ぇンだからな」
洗面所に行こうとする彼を呼び止めてわたしは言った。
「辛いって……今のやっぱり言わない方が良かったですか?」
「じゃなくて、他にもだ」
それしか言わずに、背中を見せて行ってしまった。
「……あ」
そういえば、月曜から昨日まで何もなかったとはいっても、口寂しいのは相変わらずみたいで、キスは……いつもより、と言っていいくらいされてた。
けど、今日は何も無かった。
わたしが遅く帰って来たから気を遣ってくれたのか、聖さんの電話のことで、そういう気分じゃなかったのか。
辛いってそっちのことなのか、気持ちの方なのか――――考えてたら頬に熱が上ってきて、今食べてるトマトソースのパスタみたいにわたしの顔は赤くなってるんじゃないかと思った。
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