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「……今日、どうした」
吐息混じりの声は低く抑えていても、欲情をはらんでるのが伝わってくる。
「……おかしい?」
「俺は嬉しいけど。身がもたねえんじゃなかったのか」
言われて思い出した。
「……そういえば、言ったけど……もしかして気にして……?」
「気にするわ。無理やり襲って嫌われたらって思うだろ」
「……すいません。だって、あの日は……日曜も朝までだったし、父のこともあったし」
言い訳しようとするわたしの口をキスで塞いで、彼は言おうとすることを吸い取ってしまう。
絡みついて、応えて糸を引く唇は、もうこれだけじゃ終われないのがお互いに分かるくらい、淫らなそれ自体ひとつの生き物みたいに、求め合う。
離れると、彼はわたしの濡れた唇を親指で拭って、言った。
「いいんだな。今日は」
「……いいけど、……ここじゃ嫌です」
「ン?」
「ベッドじゃないと、なんか、落ちそうで怖……」
その瞬間、ぐるっと世界が回って、わたしはソファの上に押し倒されていた。
わたしを抱いたまま体勢を変えた彼は、見下ろして言う。
「俺が、そんなヘマすると思うか」
「……でも」
「わりけど、今日は譲らねえからな」
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