【12】

2/4
前へ
/294ページ
次へ
「やだ……もう。……いじめないで……」  声が途切れて、ふるえる。  じわりと涙が滲むのを感じたけれど、恥ずかしい格好をさせられたうえに、ソファを汚してしまうほど乱れた今はもう、そんなことを気にする余裕はなかった。  ぐしゃぐしゃになった顔で、わたしは彼を見た。 「りゅ……」 「いじめてるか?俺」  憎たらしいほど冷静な低い声が返ってくる。 「っ……」 「可愛がってるつもりなんだけどな?」  とんでもない声が出そうになって、自分の手で塞いだ。  指を増やして、奥をえぐられるだけでも辛いのに、唇と舌先は容赦なく芯をなぶって――――。 「……んんっ!」  わたしの体は、反り返ったと思うと、がくん、とソファに崩れ落ちた。  彼は立ち上がって、わたしの傍らに手をついて顔を覗き込む。 「大丈夫か」 「……大丈夫じゃないです、もう……」  涙の跡に唇を触れる彼に、わたしは手を伸ばして抱きついた。  まだ乱れて落ち着かない呼吸を静めるように、彼の胸に体を押しつけると、彼の鼓動が肌を通して伝わってくる。 「……気持ちいいけど、やです。もう。……ちゃんと顔見て、抱きつきたいです」
/294ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3147人が本棚に入れています
本棚に追加