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梅雨の晴れ間というのか、今日は少し雲はあるけど、隙間から射す朝日が眩しくて、いい天気だった。
車が走り出してもまだあくびをしているわたしに、彼は申し訳なさそうに言った。
「ごめんな」
「ううん。……竜も、疲れてますよね」
「俺はいいんだよ。勝手にあんなことしてンだし、……つか、悪かったな」
「ん?」
「大丈夫だと思うけど、何かあったら言えよ。……その」
「あ……はい」
着けなかったから、ってことだ。
「俺のが大人なんだから、気遣わねえといけねえのにな。もうやらないから」
「いえ……あたしも、嫌だって言わなかったし」
彼は大きな溜息をつく。
「昨日はいろいろあって……そんな時に、会社の奴に送ってもらったとか聞いたモンだから、ちょっとな」
「……やきもちですか?」
「言うな。四十過ぎたオッサンのマジな嫉妬なんてキモいだけだろーが」
「そんなこともないけど……というより、嬉しいです。昨日話した時は、あっさりし過ぎてて、あたしが同じ立場だったらもっと怒ったり嫌な気持ちになってると思うのに、竜は平気なのかなと思ってたから」
「……そう見えたか」
「うん」
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