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「……それなら、素直に出してくれた方が嬉しいです」
笑って、彼は言った。
「なら、たまに気が向いたらな。あと、お前が」
言いかけて彼は言葉を切った。
ちょうど赤信号で車が止まって、わたしは彼の顔を見て言った。
「竜?」
ひとつ息を吐いて、彼はわたしの頭にぽんと手を置く。
「……お前が、逆の立場になるような、他の女に嫉妬するようなことにはさせねえから、って言おうとしたんだけど。……俺の意思じゃなくて今そういう面倒になりかけてンのを、相談しようとしてたのを思い出した」
「……え?」
「話の前にあらかじめ言っとくけど、俺はお前以外の女と結婚する気なんか全くねえからな」
ふざけてじゃなくて、昨日抱かれてた時みたいに真剣な表情で彼は言った。
「……はい」
よし、と手を離して彼は前を向いてから言った。
「明日、お前何か予定あるか?」
「なにも……無いですけど」
明日は土曜日。先週、母に会ってからもう一週間になる。
逆に言えばまだ一週間なのに、こうして笑っていられるのは、この人が居てくれるからだ。
「急で悪いけど、……俺の実家まで付き合ってもらっていいか」
「……ご両親に会うって意味ですか?」
「見合いの話が来てて、相手も親父も乗り気らしくて、断るなら早くお前連れてきて顔見せてやれ、って昨日聖から連絡が来た」
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