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【15.5】
「――――ああ。時間は適当に行くから。渋滞もわかんねえし、昼とかも気遣わなくていいから。……分かった。そんじゃ、明日」
外回りの途中で電話を切ると、それだけでグッタリ来た。
前に、女を紹介するために実家に連れて行ったのは10年以上昔のことだ。
それから、どっかで諦めが入ったみたいに、結婚前提の付き合いなんてしなくなった。
正直、誰でも良かった。
適当に知り合って、適当に抱いて、適当に別れて。それで良かった。
逆に、誰か特別な奴が出来る方が怖かった。
「ごめんなさい。お待たせしました」
夜、横浜駅近くで拾った涼子は、なんだかたくさんの買い物袋を提げていて、まさか、と思った。
後部座席に荷物を置いて、隣に乗り込んで来た涼子に俺は言った。
「……それ、まさか明日行くのに」
「すいません。……本当は竜に相談しようか迷ったんですけど、聞いたら多分、そんなのいい、って言うと思って……江崎さんに付き合ってもらって、手土産とか、あと服もそれなりじゃないとおかしいから、ちょっといいワンピースとか……」
俺は溜息をついた。
いい歳のオッサンのくせに、何やってンだ。俺は……。
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