【15.5】

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「……それも、言われてますけど」 「あ?」 「買い物付き合ってくれるっていうから、いつもいろいろすいません、って言ったら、コンビニのアイスコーヒーと静岡土産よろしく、って」 「それも俺が出してもいいくらいだけどな。世話になってるから」  コーヒーチケットでもあれば、それごと渡してもいいくらいだ。  ってのは、ほとんど親の心境だ。 「……そうですね。あ、お世話になってるってとこで」  顔が曇った気がしたが、とりあえず車を出した。 「……さっきの話ですけど」  走り出してしばらくして、涼子が言った。 「江崎さんが、……そういう、彼氏の家に初めて挨拶に行く、なんて時は自分のお母さんに相談したりするんだろうだけど、今涼子はそんな状況じゃないだろうから、面倒看てあげるから、って言ってくれたんです」  あれから、父親と弟からは心配して何度か連絡が来たらしいが、当然母親からは何もない。  手のひら返して、許してくれと言われても困るだろうが。 「そういうのは、俺じゃ気がついてやれないから……良かったな」 「うん。……でも、あたしは母と居ても、そんな相談なんてすることあったのかな、って思います。母と居たら、多分誰が相手でも母は気に入らなかっただろうし……あたしはずっと、誰かと付き合うなんてこともなくて一人だったかもしれないって――――」
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