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家に帰ると、部屋に入っていた涼子が、しばらくして顔を出して言った。
「あの、……今大丈夫ですか?」
俺は、台所で缶ビール立ち飲みしてるところだった。
自分の勝手な都合で二十も年下の女を振り回して気を遣わせたのが、何とも後味悪くて。
「……なんだ。酒飲んでるだけだ。構わねえよ」
「あの、買って来たのこれなんですけど……どうですか?」
涼子が着ていたのは、淡い水色の地に白で花の刺繍が入ったノースリーブのワンピースで、俺でも分かるくらい、今どきあんまり見かけない上品なシルエットで、よく似合っていた。
探すのに苦労しただろうなと思った。
「……いいんじゃねえか?……後ろは?」
何気なく言うと、涼子は困ったように言う。
「……すいません。後ろ、ファスナー途中までしか」
おい。
言わせたのは俺だけど。
「……上げてやるから、こっち来い」
背中に手を当てて気にしながら来ると、確かに首回りのラインが不自然に浮いていた。
「後ろ向け」
「……すいません」
ちょうど背中の半分くらい、ブラの金具のあたりまで上げてあって、近くに寄るとこいつ自身の甘い匂いが立ちのぼってくる。
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