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こりゃ拷問だな……と思ったが、何も言わずにファスナーを引き上げた。
「こっち向いてみな。……いいんじゃねえか。サイズもちょうどいいし」
涼子はほっとしたように笑う。
「江崎さんにも見てもらったから、大丈夫かなと思ったんですけど、良かったです。……本当は竜に見てもらいたかったんですけど、……ごめんなさい」
「別に謝らなくていい。急に支度させたの俺だし。いろいろ気ィ遣わせて悪かったな」
「いえ。結局買ってもらうことになっちゃったし……」
「これだけ買ったわけじゃねえんだろ?他にも持ってたもんな。ちゃんと請求しろよ」
「あ、はい。あと、上は白のカーディガンと、靴は、白のサンダルあるんですけど、でも傷んできてたからそれも新しいの買って、あんまりヒール高くないのにして……」
「分かった。分かったから、お前が選んできたなら大丈夫だから」
決して面倒で言ったわけじゃなく、あんまり一生懸命なのが心配になって止めただけなんだが、頬を膨らませて涼子は俺を見上げた。
「男の人が思うより、ほんと悩むんですから」
「分かってるよ」
ワンピースの丈は膝が隠れるくらいで、流行りのより色もラインも落ち着いていて、短時間で見つけるには大変だったろうと思う。
年配の親が好みそうなのを、あちこち回って探して来たんだろう。
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