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【16】
翌日、一日曇りで夜まで雨は降らない予報もあってか、サービスエリアは満車に近く混み合っていた。
「わり。一件、仕事の電話忘れてた。ちょっと待っててくれるか」
「はい」
売店で、江崎さんに何のお土産を買って行こうか考えながら、ぶらぶらと見ていると
「すいません」
と声をかけられた。
大学生くらいの男の子だ。
「はい?」
「お姉さん、一人ですか?良かったら一緒にお茶しませんか?自分たちこれからサークルの合宿なんですけど」
視線を感じて、その子の後ろを見ると、仲間らしい男の子たちがニヤニヤしながらこっちを見ていた。
昔のことを思い出して、ぞっとしてわたしは首を振った。
「……いえ、一人じゃ」
「えー。じゃ、連絡先だけでも教えてくれませんか。俺たち――大の」
有名私立大学の名前を出して、その子はしつこく食い下がってくる。
「キレイな人がいるなあと思って見てたんですよ。ここで会ったのも何かの縁だから、LINE交換くらいでいいんで」
「でも、ごめんなさい。そういうのは」
チッ、とその子は舌打ちする。
「ンだよ。ブス」
「は?」
「行こうぜ。こいつ全然ダメ」
言いながら仲間のところにその子は戻ろうとして、足を止めた。
前から来た竜が、無言で立ち塞がって見下ろしたからだ。
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