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「今日?」
「何かあるか?」
「あ、無いけど……お父さんは仕事……とか、大丈夫なの?」
父の相手の人の病気のことが頭に浮かんだ。
「今日なら都合がつくから、少し早めに出てそっちに向かおうと思ったんだ。時間は……」
待ち合わせを決めて、それじゃと電話を切ろうとした父に、とっさに思い出してわたしは言った。
「あの、お父さん。……彼が、……この前のこともあるし一度お父さんに会って挨拶したいって言ってたんだけど、今日彼も予定空いてたら来てもらっていい?その……あたしが、彼のところに居たせいで、って……気にしてたから」
電話の向こうは沈黙して、しばらく返事がなく、あまり乗り気ではないのを感じた。
しばらくして
「……急だし、無理でなくていいから」
言葉を選ぶように父は言った。
「お前がお世話になっているのは、弘樹からも聞いているし、こちらも挨拶するべきところだが、今日は急な話だし、そんなに無理に来てもらわなくてもいい。それにお母さんのことに関しては、彼のせいではないから」
「大丈夫?」
席に戻ると、江崎さんが心配そうな顔で言った。
「あ……はい」
「お母さんのこと?」
「まあ……それもそうなんですが、……」
はっきりとは言わないけど、彼への拒絶みたいなものが感じられて、冷や水を浴びせられた気がしていた。
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