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 父は立ち上がって彼に軽く頭を下げる。 「娘がお世話に……」 「いえ、大事なお嬢さん任せてもらって。頭下げなきゃならないのはこっちなんで。いろいろ仰りたいことはお有りでしょうが、お付き合いさせてもらって、ありがとうございます」  彼は深く腰を折って、父に頭を下げた。  そんな姿を見てたら、なぜだか、きゅんとして、胸が騒いで。  それまでモヤモヤしていたことなんか、どこかに吹き飛んでしまう。 「どうぞ。お掛けください」  失礼します、と隣に座る彼を見上げていると、一瞬わたしに視線を投げて口元に笑みを浮かべる。 『なんだ。そんなにいい男か?』  なんて言うのが聞こえそうで。  胸が鳴って顔が熱くなってきて、わたしは俯いた。  もう知り合って4か月にもなって、一緒に住んでて、あんなこともこんなこともされてるっていうのに、なんでこの程度で動揺するんだろう……。   彼のコーヒーが運ばれてきて、しばらくは父と彼はそれぞれの仕事の話を世間話のようにしていた。  男の人にとってはそれが挨拶みたいなものなんだろう、と思って聞いていたら父が言った。 「損保の……というと、涼子とはそういうご縁で?」