【9】

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【9】

 鹿野さんの言っている意味は分かった。  この前、居酒屋で会った、わたしが二度と会いたくない人たちのことだ。  わたしの表情に構わず、彼は悪びれず言う。 「ヤなこと思い出させたらごめん。でも、駅まで繁華街も通るし、可能性なくはないでしょ。……固まってないで、歩きながら話そう」 と、彼は半歩先に立って歩き出す。  正直、それも考えたことがないわけじゃない。  けど、あの時はお店の中だったし、まさか街中で変なこともされないだろうと、考えようとしていた。 「……確かに、安心ですけど」 「けど?」  鹿野さんは、彼と背は同じくらいだけど、それでもやや竜の方が高いかなと、並んで歩くと思う。 「なんか、利用してるみたいで嫌です」 「それは、なに。俺が涼子ちゃんを好きだからってこと?」 「――――はい?」  思わず足を止めて見上げると 「だって、そういう意味でしょ?あれ?俺今まで言ったことなかったっけ?」 「……いや、……そこまではっきり、言われたことは……」  彼は傘の下で一度視線を宙に上げて、少し考えて言う。 「まあ、俺にとってはどっちでもいいんだ。はっきり告ってようが、なんとなくそうだろうと思われてようが。どうせバレてるんだし、今のところ望みがないのは同じだし。だから、さっき利用って言ったけど、ぶっちゃけて涼子ちゃんの気持ちは関係ないんだよ。俺がそうしたいだけだから。いわば、タチのいいストーカー?」  申し訳ないけど、その表現すごくしっくり来る。
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