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【14】
「――――すず。起きろ」
翌朝。軽く頬を叩かれて目を覚ますと、彼が顔を覗き込んでいた。
「わりーけど、話がある。かったるいかもしんねぇけど、今日は一緒に行ってくんねえか」
彼はワイシャツ姿で、もうすっかり支度を終えていて。
普段は、眠かったら先に行ってくれるのにと思う。
「……夜じゃダメ?」
眠くてまだ頭がよく回らない。
「悪いな。車ン中で寝てもいいから」
彼の手がぐしゃぐしゃと頭を撫でる。
「……分かったけど、一回ぎゅってして」
「は?」
体を起こすと何も着てなかったけど、わたしはそのまま彼に抱きついた。
首に手を回してしがみつくと、彼は背中に手を置いて言う。
「何だ、今日は。甘えて」
「……昨日から、なんか変だから。竜」
彼は溜息をつく。
「……わり。……落ち着いたら、この前話した指輪。買おうな」
「え?」
「あ、いや。ネックレス、切れそうで怖いって言ってたから、指輪なら壊れねえだろって方の」
「……うん。……お揃いは?」
「……そりゃ、マジな方になっちまうからなあ……考えとく。ってか、どうしたよ。今日は」
眠くて無意識だから余計に、なんとなくいつもと違うのを感じて。
抱き止めてもらって、甘えていたかったのかもしれない。
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