プロローグ ―州都の守護神―

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プロローグ ―州都の守護神―

 サルーア大陸の呼称は、古代イグレニア語の「サイア・ルーア」――「蓮の花」を語源としていた。  美しい蓮のように、豊かな経済と文化がサルーア大陸には花開いている。  大陸に存在する三十七州の内、アソーティカ州は最西端にあった。その州都アソーティカ市は、カルデス海に注ぐアボリカ河の河口に位置している。  古代より、この街は他大陸との交易によって栄えてきた。  その恩恵は今も続き、大陸に冠たる大企業の多くはアソーティカ市に本社を置き、雇用と利益、活発な経済活動をもたらしていた。  豊かさを求める人々は、アソーティカ市を目指した。  東シロ大陸から、ナディナ大陸から、ナン大陸から――  移民に対し寛容であったため、今、州都は人口1200万人を抱える、大陸最大の都市へと成長していた。  反面、多様な文化と人口の流入はまた、様々な犯罪の温床ともなった。  市民を凶悪犯罪から護るため、州都には州警察とは別個に、アソーティカ市警察が設けられている。  本部と16の管区からなる市警察の検挙、事件解決率はサルーア大陸随一の地位を10年以上譲らず、4万5千人近い職員数でも、大陸最大級の警察機構だった。  中でも、実績と優秀な人材を誇るのが、私服刑事218人を擁する、アソーティカ市警察刑事部殺人課だった。  州都を護るために日々、彼らは犯罪の最前線に身を置き闘っている。  彼ら殺人課の刑事のことを、市民たちは敬意を込めて『州都の守護神』と呼んだ。    これは、そんな刑事部殺人課に新たに赴任した、新人刑事アーサー・ヴァレットと、彼の相棒となるベテラン刑事ノルディン・カーンの物語――
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