再会 ~慶佑side~

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新田(にった) 琴乃(ことの)は同じ病院の看護師 年は確か…今年35歳 今は外科病棟勤務だが以前 呼吸器内科で 一緒に仕事をしていた。 小麦色の肌にスラリとした身長に長い手足。 切れ目を入れたようなくっきりとした二重が印象的な女だ。 琴乃「ねぇ、先生。 私と寝てみない?」 一回(ひとまわ)り以上歳の離れた彼女に そんな風に言われたのはいつの日だったのか… 高村と離婚してから 体だけの関係を何人とも持っていた俺は 来る者拒まず 去るもの追わず 誘われたから琴乃も例外に漏れず 抱いた。 愛し合うのではなく ただのスポーツの様に。 誰でもいい。 このやるせない想いを ほんの束の間忘れられれば… 何度か寝ているうちに 「慶に好きな人が出来るまででいいから一緒にいさせて」 そう言い いつの間にかここに住み着いたのだ。 彼女も俺と同じように 苦しく叶わない愛を 経験している…ような気がする。 わざわざ聞かないし 知る気もないが そう感じた。 同類相憐(どうるいあいあわ)れむ 要するに俺達は傷の舐め合いをしているのだ。 琴乃「…っ どうしたの? 何か 病院であった?」 繋がったまま 脱力した俺の背に 琴乃は腕を回し優しく撫でる。 詩とは違う体臭。 違う感触。 慶「…っ 何でもないです」 そう言い 体を起こすと 彼女の腕を引き 起こしながら 慶「乱暴にして悪かった」 ボソリ…と口にしバスルームに向かった。 シャワーを頭から浴び 鏡に映る自分と眼が合った。 感情のまま拳を叩きつけ クソ…っ! 自分の顔がひび割れ 歪む。 他の女を抱いても満たされない。 手に腕に残る 詩の感触が未だ鮮明に残っていた。
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