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律の朝の検査結果は 思いの外良く
安心した私は 実家に向かった。
車を走らせながら 頭に浮かぶのは
律の事ではなく 慶佑…いや、谷先生のこと。
逃げ出した後 恐る恐る病室に帰ったが
ナースステーションにももちろん律の
病室にも彼は居なかった。
ホッとする気持ちと…
いや、これ以上 考えてはいけない。
私達は20年以上も前 結婚の約束をしていたが
もう、既に終わっているのだ。
病気でOpeし これから先 子供を持つ事は
叶わないと診断された時
子供好きな慶佑に抱かせてあげることが
出来ないと絶望した。
浅はかな私は彼の為と傲慢にもそう思い
それを告げずにただ 連絡を絶った。
苦しかった、切なくて 恋しくて…
会いたくて会いたくてたまらなかった。
留守録の彼の深い声を街灯の明かりが
仄かに照らす部屋のベッドの上で
膝を抱えながら幾度となく聞いた。
でも、彼の望みを叶えれない私が
隣に立つことを 一緒に人生を歩むことを
許されるべきでは無いとそう思った。
それが間違いだったと気づいた時には
すべて遅すぎた。
彼は自身の部屋のベッドで私では無い女を
抱いていたのだ。
スマホが震え Lineの受信を知らせた。
丁度信号が赤になりブレーキを踏む。
ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ
お疲れ様です。
律くんの調子はいかがですか？
大変なところ 申し訳ないのですが藤本さんに
インフルA型が出ました。
木曜日まで出勤停止ですので 月から木曜日のシフト変更で牧野さん入っていただけないでしょうか？
ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ
それは 院長先生の奥さん 静香さんからだった。
添付された勤務表の画像には
月、火曜日 ※ 2コマ
水、木曜日 午前 １コマ
と記されていた。
小さな街のクリニックなのだ。
スタッフはギリギリの人数で回しているので
こんな時はお互い様だ。仕方ない。
日曜の夕方には玲が帰ってくるし
どっちにしろ一旦帰らなければ。
※要するに 月、火は1日勤務
水、木は午前中のみ
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