葛藤 ~詩side~

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12月も半ばを過ぎると 街は浮き足立ち (せわ)しくなっていく。 今年は特に寒いせいか 1日の患者数も倍以上に 増えとても忙しい。 受付時間が終わっても診察待ちの患者さんで 待合室は混み合っている。 こんな時の勤務は 体力的にも精神的的にもキツイ。 来院した患者さんの顔色や様子を見 問診をとって インフルエンザの疑いがあれば すぐに隔離して検査。 いつも以上に注意をはらい スタッフ皆ピリピリしているのだ。 先日のイレギュラーな遠出+看病で すっかり風邪をひいてしまい 仕事中は 何とかなったが 終わると倦怠感で 身体を引きずるように電車に乗って帰宅し 家に帰れば 家事と玲のご飯の用意や次の日のお弁当の準備 洗濯物もいっぱいだ。 律の事が心配で仕方ないけれど 午後の勤務があれば 定時に終わったとしてもどうしても面会時間に間に合わないし 余裕も無かった。 そんな私の代わりに律の病院へは 母が行ってあれこれ世話を焼いてくれて とても助かっていた。 母「律ちゃん、だいぶ良くなってきたのよ。 あんたは来れる時に来ればいいから。 玲ちゃんの面倒をみなきゃだし 心配しないで」 ゴホゴホゴホッ だるさは改善されたが今度は咳が止まらない。 患者さんの手前 マスクをしていても あまりいい印象は与えられない。 息をする度 胸で変な音がする。 仕方なく診察を受け咳止めをもらった。 院長「大丈夫か? 酷い咳やなぁ。一番強い咳止めと吸入出したる」 ありがとう、先生。 院長「これで良くならんかったら胸のCTな。 市民病院紹介したるから行ってこい」 えーーーーーっ 院長「しゃあないやろ。 週明けに咳続いてたら とりあえず 胸部のレントゲンや。 肺癌や肺結核だったらどうする?」 静香「ホンマ そうやで。 結核やったら 〇〇病院(結核の専門病院) 先生に紹介してもらい。ちょっと遠いけど 週一で御見舞行くし」 そう言って静香さんは 悪戯っぽく笑った。 綺麗な見た目とは裏腹に なかなかどうして ちょっぴり毒舌。 静香さんは 先生の強い希望で 午前中は 医療クラークとしてクリニックに来ている事が多い。 俺様のクセに 静香さんが大好きなのだ。
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