衝撃と決意 ~慶佑side~

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「次の予約は2週間後です。 お大事にしてください」 予約日時が印刷された紙を患者に渡し 見送った。 詩が逃げるように去ってから3日が経った。 会わなければ この気持ちも薄れていくはず。 そう思うのに… また会いたいと心が叫ぶ。 彼女の息子と回診の度に顔を合わせれば 体がつらく言葉もそれほど交わせないが そっくりな眼が 俺を見つめる度に 胸が苦しくて 恋しくてたまらない。 彼が早く良くなって退院してしまえば この思いにピリオドを打つことができるだろうか? 夫と子供達のいる彼女の家庭を壊す わけにはいかない。 どれ程恋しくても 彼女が幸せでいてくれれば… 俺が隣にいれなくてもいいじゃないか。 大切に思っているからこそ 遠くから幸せを 願わなければ。 諦めろ、俺は遠い昔の愛にしがみついているだけだ。 牧野 律くんのお見舞いには 詩の母が 来ているようだ。 仕事が忙しいのか… それともあんな薄着で寝てしまい 案の定風邪をひいてしまい来れないのか… 牧野 律と書かれた入院カルテを開き ※アナムネを見る 父 牧野 総一朗 45歳 会社員 インドネシア単身赴任中 母 詩 47歳 医療事務 クリニック勤務 本人 律 19歳 大学 2回生 弟 玲 16歳 高2 緊急連絡先 母 090-××××-×××× 〇〇県ふるもとクリニック 07×-×××-×××× 駄目だと思いつつ 彼女の些細な情報を 記憶してしまいそうになる。 慌てて それを閉じた。 ※アナムネとは既往歴・現病歴の他 家族構成などを含んだ患者情報を集約したもの
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