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特別な場所を見つけた事に、幼い僕はその特別な場所を誰かに知らせたい使命感に駆られる。
そもそも、それが間違いだった。
僕は嬉しさに舞い上がりながら、家に戻る。
不思議な場所を大好きな両親に見せたかった。
一緒にこの昂った気持ちを共有して欲しかったのだ。
家に帰って両親の手を引いて特別な場所へと戻る。寒い中元気に走り回る僕に手を引かれて苦笑いを浮かべる両親。僕は構わず、手を引いた。
きっと、あの不思議な場所を見たら驚く。その表情を楽しみに。
だが、そうはならなかった。確かに、驚きの表情は見せたが直ぐにその表情は蒼白に変わった。
紅く染まった雪を手袋を履いた手で掻き分ける。
雪の下から、紅く染まった手が突き出した。
お母さんが小さく悲鳴をあげる。
お父さんは持っている携帯電話で、焦る気持ちを抑えて電話をかける。
暫くしたら、その特別な場所は警察官で埋め尽くされた。僕のつけた足跡はその大勢の警察官の足跡に掻き消された。
僕は折角見つけた特別な場所を奪われた。
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