雪原にて。

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「…昔、雪原で雪に足跡をつけてたら、一部分だけ足跡が紅 く染まったんですよ…それが忘れられない程美しくて。もう一度見てみたくて雪原を買ったんです。」 「へぇ、不思議な事もあるもんですね。紅く染まる足跡ですか。で?紅く染まった理由は分かったんですか?」 興味深そうに尋ねる男に小さく頷く。理由を口にしない僕の話に更に興味を引かれたのか、男は食い入るように見詰めて話の先を促す。 「…死体が埋まってたんですよ、雪の下に…。」 男の興味を焦らした所で、唇を耳元に寄せ低く囁く。男は身震いし、顔を強ばらせた。それを見て、くすくすっと笑みを零せば男もつられるように笑う。 「もう…先生も人が悪い!!人を揶揄って…。」 そう言って僕の肩をばしばしっと叩く。本気で驚いたのだろう、誤魔化す為に叩かれる肩は僅かに痛い。僕が顔を顰めたのに気づけば男は叩くのを止めた。 「ふふ、まぁ、良かったら僕が買った雪原に遊びにいらしてください。紅い足跡を再現しますから…。その為に買った雪原ですし。」 僕の言葉に男は"楽しみにしてます!!"っと言葉を残してその場から離れた。 楽しみなのは、僕の方だ…。 ・雪原にて。「終わり」
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