第3話

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第3話

カシャリ 「………」 カシャリ 「……………」 カシャリ 「あのねえ」 「どうかしたか」 私はファインダーを覗いたまま返事をした。 彼の呆れたような顔がこちらを向いた。 私は躊躇わずにシャッターを押した。 「それだよ、それ」 「うん?」 「アンタは俺を芸能人かなにかだとでも思ってるワケ?」 「まさか。君は田舎の温泉地に住んでる、何をしているのか良く分からない、ただの青年だ」 「……ミステリアス、って言ってくれないかな」 私は頷いて訂正した。 「ミステリアスな、青年だ」 「そういうことじゃないよ……ここ数日で大分つかめて来たけどさ、アンタって本当にどっかがズレてるよね。俺も人のこと言えないけど、アンタよりはまともだと思うよ」 「そうか」 「あれ、怒らないんだ?」 興味深そうな顔でこちらを覗き込んでくる彼に、私はまたシャッターを切った。 「怒らない。良く言われることだ。どのみち、どこも世界の枠からはみ出さずに生きられる人間なんて、いやしない」 彼は私の言葉に小さく息を飲んだけれど、何か言葉を堪えるように、小さな息にして吐き出してしまった。 「……程度ってものがあるんだよ」
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