0人が本棚に入れています
本棚に追加
姉と弟
冬に入って既に数日が経ち、日が暮れるのもすっかり早くなった。
藤野和那は白い息を吐きながら、ポケットの中で握った鍵を取り出し、ドアの鍵穴に突き刺した。そして、ん?と違和感を感じて手を止める。
状況を察するとため息をついて鍵をしまい、ドアを開けた。
「貴姉、来てるの?」
玄関で靴を脱ぎながらそう呼びかけると、
「んー。お帰り」
居間からそんな返事が返ってきた。
以前合鍵を持って帰られてから何度かこんな状況もあったので、そろそろ慣れてきた。
苦笑いを浮かべながら寝室に入ると、スーツから部屋着に着替えて居間に向かった。
「来るなら事前に連絡くれればいいのに」
スーツ姿のままソファーに寝そべって携帯ゲームをいじっている姉、藤野貴子の姿に、すこし呆れた表情を浮かべながら和那が言う。
「えー。鍵使わずに連絡してわざわざ外で待ち合わせろって? 面倒くさいじゃない」
「こっちに予定あったり、準備が必要な時もあるかもしれないだろ。片付けとかさ」
「今更? あんたの部屋、いつもきれいじゃない。物少ないから」
最初のコメントを投稿しよう!